自分で稼いで、そのお金でお酒や、タバコを買いたいんです。
堀木より俺の方がよっぽど絵がうまい。
そんな時、自然と頭に浮かぶのは、武市が中学生の時に描いた、いわゆる幽霊自画像である。 幽霊、中学生の時に描いた自画像。 失われた名画。 度重なる転勤で行方不明になっていたが、確かに素晴らしい絵だと感じた。
飲みかけのアブサンが一杯残っている。
その喪失感を、いつまでも償うことが難しいかのように、私は密かに表現していた。絵の話をするたびに、その飲み残しのアブサンが目の前にちらつき、「この人にあの絵を見せて、自分の絵の才能を信じてもらいたい」と焦りながらもじもじしていた。
さあ、どうでしょう。真面目な顔してふざけるから可愛いんだよ。
冗談じゃない、本当だ、あの絵を見せたいんだ。
漫画なんだけどね。 少なくとも、堀木よりは漫画の腕はいい。
ピエロの欺瞞に満ちた言葉を、より真剣に信じた。
そう、その通りだ。実は私も感心していたんです。いつも茂子のために漫画を描いているんだが、思わず噴き出してしまったよ。 同社は、あまり知られていない子供向けの月刊誌を発行していた。
あなたを見ると、たいていの女性はあなたのために何かするのを待ちきれないと思います。……あなたはいつもおどおどしていて、しかもコメディアンみたいな人だ。時々、彼女は自分自身でとても落ち込んでいて、それが女性の心をさらにむずむずさせるのです。……
静子にいろいろ言われても、お世辞を言われても、これが男の目から見て嫌な性質だと思えば、もうそれでいい。
静子から逃げて自活できるように、女より金を探せと密かに願い、努力したが、ますます静子に頼らざるを得なくなった。
静子から逃げて自活できるように、女より金を探せと密かに願い、努力したが、ますます静子に頼らざるを得なくなった。 もっともっと静子に怯えなければならなかった。
私はもっともっと静子に怯えなければならなかった。
静子の計らいで、平目、堀木、静子の3人の会談が実現し、私は故郷から完全に孤立することになった。
静子さんの努力のおかげで、私の漫画もお金になり、そのお金でお酒やタバコを買いましたが、私はますます落ち込んでイライラするようになりました。まさにその通りだった。
どんどん沈んでいく
しずこ」の月刊誌を読み漁るようになった
金太さんや太田さんの冒険を描いているとき、ふと故郷を思い出し、情けなくてペンが動かなくなり、うつむいて涙を流したこともありました。
そんな時、茂子さんだけが、私にある種の救いを与えてくれたのです。そのころのシゲ子は、私のことを特に意味もなくパパちゃんと呼んでいた。
パパちゃん(お父さん)と呼んでいた。 パパちゃん。 祈れば何でも与えてくださるというのは、本当なんでしょうか。
私もその祈りを捧げたいと思いました。
ああ、私に冷たい意志を与えてください。私に冷たい意志を与えてください。
私に人間の本質を知らしめてください。私に人間の本質を知らしめてください。人間が他人を押しのけることは罪ではないことを知らしめてください。私に怒りの仮面を授けよ。
そうだ、その通りだ。彼はあなたにすべてを与えるかもしれませんが、あなたの父ではありません。
私は神にさえ怯えていました。神の愛を信じず 神の罰だけを信じた 信仰か まるで裁きの場に行き、頭をなでるだけで、神の鞭打ちを受けるような気がした。 地獄は信じても、天国の存在は信じられませんでした。
なぜ、信じないのか。
なぜ、信じないのか。
親に背いたからだ。
そうなんですか?
みんな、あなたのお父さんはとてもいい人だと言っていますよ。
このアパートのみんなが私を好きなのは知っています。でも、私は彼らを恐れています。私が彼らを恐れれば恐れるほど、彼らは私を好きになり、彼らが私を好きになればなるほど、私は彼らを恐れ、彼らから遠ざかっていかなければならないのです。
茂子さんは、いったい何を神頼みしたいのでしょうか?
私は何気なく話題を変えた。
シゲ子は本当の父親が欲しいんだ。
私は目眩がするほどであった。敵だ。私が茂子の敵なのか、茂子が私の敵なのか、ともかくも、私をおびやかす恐ろしい大人が、ここにもいた、見知らぬ、謎の見知らぬ、秘密だらけの見知らぬ人が。
茂子だけだと思っていたが、やはりこの人も見知らぬ人、謎の多い見知らぬ人、秘密だらけの見知らぬ人であった。
私は思わずハエを叩き殺すような牛の尻尾を持っていた。それからは、茂子にも怯えなければならなくなった。
茂子!
いるのか?
堀木は、また私のところに来るようになった。家出した日にあれだけ寂しい思いをさせられたのに、それでも拒めず、不思議な笑顔で迎えてくれた。
あなたの漫画は結構人気があるそうですね。素人がビクビクしてるんだから、そりゃあ敵いませんよ。しかし、油断は禁物だ。 お前の絵は少しも上手くない。
名人気取りもいいとこだ。師匠みたいなことまでしてる。
俺の描いた幽霊の絵を見せたら、どんな顔をするだろうかと思った。
そんなこと言うなよ。逆ギレの悲鳴があがりそうだ。 堀木、ようやく得意げな顔をした。
堀木、ようやく得意げな顔をした。
いつか世渡りの才能だけで、ボロが出るから。
世渡り上手な才能。思わず笑ってしまった……自分。自分自身に、世渡りの才能!?
しかし、自分のような人間を恐れ、避け、騙すことは、諺に従えば
しかし、私のように人を恐れ、避け、騙すということは、俗に言う、触らぬ神に祟りなし、狡猾狡猾という指導方針を堅持しているのと同じである。私たち人間は、相手のことが全く分からず、全く間違った見方をしているのに、自分は親友だと思って、相手が死んだら泣きながら弔辞を読むのでしょうか。
堀木は、何しろ家出した時にそばにいてくれた人だから(静子に言われてしぶしぶ承諾したのだろうが)、まるで自分が更生した大恩人か月下の氷室のような振る舞いをしていた。また、深夜に酔っ払って訪ねてきて泊まったり、5円(いつも5円だった)を借りたりしていたそうです。
しかし、女遊びはもうたくさんだろう。世間はこれ以上許さない。
世間とは一体何なのか。 人類だろうか。 この世界は本当はどこに存在するのだろう。強くて、厳しくて、怖いものだと思っていたが、堀木にそう言われて、ふと、それはお前ではなく、世界のことなのだと思った。(怒らせるといけないと思い、引っ込めました) (この世のものではありません。許してくれないんだね)(許さないんだね)(そんなことしたら、世間から罰が当たるよ)(世間じゃないんだよ。それはお前だ、そうだろう) (世界はお前を葬るだろう (世界じゃない。己を知れ、汝の個人的恐怖、汝の怪物性、汝の悪意、汝の古いクズリ性、汝のババア性!(埋葬されるのは汝であろう?
いろいろな言葉が浮かんだが、私はただハンカチで顔の汗をぬぐった。
己を知れ、汝の個人的恐怖、汝の怪物性、汝の悪意、汝の古いクズリ性、汝のババア性!(埋葬されるのは汝であろう?
いろいろな言葉が浮かんだが、私はただハンカチで顔の汗をぬぐった。
冷や汗、冷や汗!
と、ハンカチで汗を拭きながら笑った。
しかし、そのときから、私は「世界は個人である」という考えを持つようになった。
世界は個である」と思うようになってから、自分の意志で動くことが以前より多くなった。静子さんの言葉を借りれば、少しわがままになり、おどおどしなくなった。あるいは、堀木の言葉を借りれば、ケチになった。あるいは茂子の言葉を借りれば、茂子に対する愛情が薄れた。
無口で、笑わず、毎日毎日、茂子と一緒にいる。
金太さんや太田さんの冒険や、ノン気のとうさんの明らかな崇高な冒険や、ノン気のお坊さんのことをいつも考えていた。
ノンキー和尚とか、ノンキー和尚とか、ノンキー藤三とか。
また、「セッカチピンちゃん」というわけのわからない絶望的なタイトルのマンガを連載し、いろいろな出版社からの注文に応えていた(静光社以外の出版社からも少しずつ注文が入っていたが、静光社よりさらに下品ないわゆる三流出版社ばかりだった)。そして、静子が仕事から帰ると交代で外に出て、高円寺駅近くの屋台やスタンドバーで安くて強い酒を飲み、少し明るい気分でアパートに戻ってくるのである。
見れば見るほど不思議な顔をしている。淡々とした坊主の顔は、実は君の寝顔をイメージしたものだ。
寝顔もずいぶん老けたな。まるで40歳のオッサンだ。
お前のせいだ。あんたに吸い取られたんだ。水の流れと人間の身体は別物だ。 何をそんなに心配してるんだ、この川辺のお坊ちゃまは。
騒ぐな、寝ろ。
騒ぐな、寝ろ。 それとも飯を食うか? 彼らはとても落ち着いていて、気にしない。 飲みたいなら飲むよ。 水の流れと人間の身体は別物なのだ。 歌いながら静子さんに服を脱がされ、胸におでこを押し付けて眠ってしまうのです。次の日、私は昨日と同じように同じことを繰り返し行うのです。その日の野暮な大喜利を避ける限りは。そして当然、大きな悲しみもやってこない。ヒキガエル(蛙)は行く手を阻む石を通り過ぎる。 ギ=シャルル・クロードのこの詩(上田敏訳)に出会ったとき、私の顔は真っ赤に染まった。 ヒキガエル。(それが私だ。世界は許すも許さないもない。埋葬もされず、埋葬されることもない。私は犬や猫より劣る動物である。ヒキガエル(蟾蜍)。(その動きが遅いだけ)。